2025.05.05
技術
漏水音とは
漏水調査の現場ではお客様から、「耳が良いですね」と有り難いお言葉や、「これが漏れている音?」といったご質問を頂く事がもあります。
はたして、漏水の音の正体とは・・・
今回は、いつもの記事から少し趣を変えてお話ししてみたいと思います。
以前、調査に関する講習会のご依頼を頂いた時の内容を一部抜粋したものとなります。専門用語も出ていますが、力を抜いてお読みいただければ幸いです。
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弊社では、お客様からご依頼いただく調査作業の他に、漏水や地中レーダ等磁気探査の研究、開発に取り組んでいます。
さて今回は、実際の現場や実験で収集した音のサンプリングデータの解析をもとに、お話しさせていただきます。

路面音聴調査(都市部における夜間での作業状況)
「音」とは、物質を振動させることで生じる物理現象ですね。
皆さんの現場で、大量に漏れているのに漏水箇所が見つからない...といった経験をお持ちの方もおられると思います。
そこで見つからない原因はどこにあるでしょうか。
一口に漏水といってもパターンがありますね。その中でも、土中の管本体における漏水、いわゆる地下漏水について診断を行っている弊社の視点からクローズアップしていきます。
ピンホールや継手の漏水口、欠損箇所では、そこから漏出した水のエネルギーによる摩擦に伴い、管周りの地層(埋設土)が削り取られます。これは皆さんが現場で掘削をされた際、常々目撃されていることと思います。復旧時、埋戻し材が足りなくなったといった経験も珍しくないでしょう。
一般方式である音聴調査では、漏水に伴う異状音を電子的に増幅し、地上面で可聴するものですね。
地上面からの1/3オクターブ分析では同等条件の管敷設環境において、漏水の初期、中期、後期では、各グループの卓越周波数にある片重がみられました。
これは摩擦となる対象の違い(管の材質、埋設土、砂、石、水量)、調査条件の基底にもよりますが、地下構造に空洞化が進んだ後期の状態では、特異性がみられます。この素因の一つとしては、空洞の規模や形状に伴って、異状音の発現(音の出方や伝播)における異相が考えられます。そして、空洞化が進んだケースは、フラットで音圧が小さくなるという結果が得られました。
異状が進んでいるほど、エネルギーが大きくなるほど、それに伴って反応も大きくなると思われる方が多いと思います。しかし、各要素を積み上げていくと、対象となる物理現象そのもののスケールと、そこから得られる反応の強度(規模)は必ずしも正比例するとは限りません。
これについて、漏水調査の面へ考えを転じ、分かりやすく述べるなら、音の大小ではなく、余分な音をはじき、関係のある音を掬い上げることに着目すれば、漏水を見つけやすくなるという事になりますね。
漏水調査機器の帯域調整では、周辺の環境騒音やトランスなどの干渉をカットするものを基本として考えられています。干渉要素については、熟達した技術員は地形より判断し対処できる設定となります。一方、地下状況については、不可視かつ未知です。ここで漏水の状況、ステージに応じた帯域調整を備えておけば、さらに探知精度が高まり、なおかつ空洞化が進んだ漏水箇所の摘出にもつながります。
以上のことからは、調査機器や聴感といった受信側の感度の高さも必要ですが、異状反応についてどのような処理を為すかで、より精度的な結果が導かれるということが分かります。
総じて、経験則も大切ですが、如何に科学的にアプローチするかがカギといえるでしょう。現場レベルで話しをするなら、弊社では1路線に対し、捕捉帯域のパターンを変えた走査を重ねる事により探知精度及び効率を高めています。

本管漏水により地下方向に形成された空洞
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今回は、調査の基本ともいえる「漏水音」に関し、ご紹介できる範囲で記させていただきました。理工系の方は音波の伝わり方について想像される部分もあったかと思います。続きはまた別の機会にご紹介してまいります。
弊社では探知困難な漏水もご対応しております。見つからない漏水でお困りの現場がありましたらご相談ください。